アトピー性皮膚炎は、良くなったり、悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を特徴とする皮膚疾患です。患者さんの多くは皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン…皮膚バリア障害)とアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)をもっています。多くの場合子供の時に発症し、治癒することもありますが、時には大人になっても症状が続く場合があります。
治療は、保湿剤で皮膚バリア障害を改善させることが基本となります。しかし、すでに生じた湿疹(アレルギー反応)を抑えることは、保湿治療ではできません。ここには、ステロイドや免疫抑制剤の外用剤を使用します。早期に治療することで新たな感作(アレルギーの成立)を防ぎ、アトピー性皮膚炎の発症や増悪を予防することができます。
<ステロイド外用療法について>
ステロイド外用薬が使われて60年以上が経過し、アトピー性皮膚炎治療における重要性・安全性が確立しています。しかしステロイド外用はこわい、という間違った情報、噂が今も蔓延しており、適切な治療を受けられずに日常生活に支障をきたされている患者様が多くいらっしゃいます。
その背景には、「いつまで外用療法をつづけたらよいのか」「どれくらいの外用剤を、どの範囲に塗ったらよいのか」という、細かい指導を、医療者側が適切に行ってこなかったことが一つの原因としてあげられます。まだ炎症が残っていて治療が必要な状態でも、かゆみがなくなれば患者様は「よくなった」と思って外用療法を中断してしまい、症状が再発する、というケースが多くみられました。その結果、「薬がやめられなくなる、ステロイドは怖い薬だ」という悪いイメージが広がってしまったのです。
ステロイドは、上手に使えば、副作用を最小限にとどめながら、症状をよくしていく強い味方となる薬です。
副作用としては、皮膚萎縮、毛細血管拡張、ニキビ、多毛などが主なものですが、これらは強めのステロイドを長期間外用した場合に起こってくる、皮膚だけに出現する副作用であり、多くは、ステロイド外用量が減れば、元にもどります。また、医師の指導のもと、適切に外用療法を行っていれば、全身的な副作用がでることはありません。
当院では、外用指導を細やかに行いながら、患者様が自分らしく日常生活を送っていただけるよう、最大限のサポートをしていきます。また、必要時は紫外線療法や抗アレルギー剤内服なども組み合わせることで治療期間・外用量が少なくなるよう工夫しています。
<アトピー性皮膚炎と食物アレルギー>
アトピー性皮膚炎を放置すると、やがて皮膚から食物アレルゲンが侵入して食物アレルギーを発症し、さらには喘息などのアトピー疾患を併発することが知られています。 食物アレルギーや喘息の予防のためにもアトピー性皮膚炎の治療は大切です。適切な外用療法を行えば食物制限することなく、皮膚炎が改善する場合がほとんどです。しかし、乳児のアトピー性皮膚炎において、稀に、適切な外用治療を行っても皮膚炎のコントロールがつかず、食物アレルゲンの関与が疑われる場合があります。このような場合は、精査の上、必要であれば適切な制限が必要となります。精査が必要となりました場合は、専門医療機関をご紹介させていただきます。